時は江戸。
  人里離れた山間に、怪しく不可思議な技を使う民が
肩を寄せ合い暮らす里があった。

里の名前は『くん』。
この地に住まうある者は、瞬く間に千里離れた場所に現れ、
またある者は姿形を自在にへんさせることができたという。
古薫の民は『じゅつ』と呼ばれ、
その技は時に大いに人々の助けとなった。

だが心無い人々は古薫に住まう民を『化け物』と恐れ差別し、
間違っても里の近くに寄ろうなどとは考えなかった。

時は江戸。
  人里離れた山間に、怪しく不可思議な技を使う民が
肩を寄せ合い暮らす里があった。

里の名前は『古薫(こくん)』。
この地に住まうある者は、瞬く間に千里離れた場所に現れ、
またある者は姿形を
自在に変化(へんげ)させることができたという。
古薫の民は『術師(じゅつし)』と呼ばれ、
その技は時に大いに人々の助けとなった。

だが心無い人々は古薫に住まう民を『化け物』と恐れ差別し、
間違っても里の近くに寄ろうなどとは考えなかった。

  古薫から遠く離れた小さな町。
幼い頃に両親を亡くし、天涯孤独となった少女がいた。

少女は誰にも頼らず弱音も吐かず、
どんな苛めに遭おうとも必死で生き続けてきた。
気付けば誰かを信用することが出来なくなった少女は、
世間と関わることを諦め、その心を閉ざしてしまっていた。
周囲はそんな少女をまるで『氷の女』だと誤解し、煙たがった。

  古薫から遠く離れた小さな町。
幼い頃に両親を亡くし、天涯孤独となった少女がいた。

少女は誰にも頼らず弱音も吐かず、
どんな苛めに遭おうとも必死で生き続けてきた。
気付けば誰かを信用することが出来なくなった少女は、
世間と関わることを諦め、その心を閉ざしてしまっていた。
周囲はそんな少女をまるで『氷の女』だと誤解し、煙たがった。

ある日、少女の前に一人の男が現れた。

「あなたは誰?」
「俺は、放浪癖のあるじゅじゅつさ」

男は柔らかい微笑みを浮かべ、こう言った。

「お嬢さん、あんたには大事なものが欠けてるね」

男の手の平から突然煙が現れたかと思えば、
それは少女を包み込むように取り巻いたあと、
跡形もなく消えてしまった。

「あんたが人間としてちゃんと心を持ったその時、呪いは必ず解けるさ」

少女はその日、男に六つの感情を奪われた。

人ならざるわざを背負った術師の男たちと、
人として生きることあたわざる災いを背負った氷の少女……。
彼らの出会いの先に待つのは――?

誰よりも人らしく生きたいと願った男女の愛の物語が今、花開く。

ある日、少女の前に一人の男が現れた。

「あなたは誰?」
「俺は、放浪癖のある呪術師(じゅじゅつし)さ」

男は柔らかい微笑みを浮かべ、こう言った。

「お嬢さん、あんたには大事なものが欠けてるね」

男の手の平から突然煙が現れたかと思えば、
それは少女を包み込むように取り巻いたあと、
跡形もなく消えてしまった。

「あんたが人間としてちゃんと心を持ったその時、
呪いは必ず解けるさ」

少女はその日、男に六つの感情を奪われた。

人ならざる業(わざ)を背負った術師の男たちと、
人として生きること能(あた)わざる災いを背負った
氷の少女……。
彼らの出会いの先に待つのは――?

誰よりも人らしく生きたいと願った
男女の愛の物語が今、花開く。